Laboratory of Silviculture, Graduate School of Agriculture, Kyoto University
京都大学 大学院農学研究科 森林科学専攻

森林育成学研究室

Researches

   森林育成学分野は、京都大学フィールド科学教育研究センターの教員が構成員となっている、農学研究科森林科学専攻の協力講座です。日本列島は、モンスーン気候の影響を受けて夏季に湿潤な条件下にあり、森林帯としては、亜寒帯林、冷温帯林、暖温帯林と亜熱帯林が連続する特殊な地域ですが、フィールド科学教育研究センターは、亜寒帯に近い北海道研究林から暖温帯に含まれる山口県の徳山試験地まで、6ヶ所の研究林・試験地を持っています。この他にも、森林を取り巻く多様な課題解決のため、履歴の異なる森林や、荒れた里山など、多くのフィールドが国内や国外(インドネシア・マレーシア・ミャンマーなど)にあります。森林育成学分野では、これらの研究拠点を中心にして、森林の生産、生態系機能、炭素貯留の将来予測などの諸問題に関して、生態学的な基礎研究とともに応用研究を展開しています。

  近年、森林を取り巻く環境は大きく変化しています。大気の二酸化炭素濃度の上昇とそれに伴う温暖化などその影響は地球規模で生じ、都市から離れた森林にもその影響は及んでいます。これらに関わる森林生態系の基盤的機構である物質循環を解明し、災害・攪乱に強い持続可能な森林生態系管理に生かすことは、本研究室の重要な課題のひとつです。そのために、気候や地形などの環境要因に応じて成立する森林とその遷移、水や炭素の循環などをシミュレーションした生態系や気候の将来予測研究、そして多地点・長期の野外データを統一的に解析して樹木の生態、森林の物質生産や種多様性が決まるメカニズムに関し、普遍性および地域固有性を明らかにしようとしています。さらに、森と隣接する渓流生態系では生物間相互作用を精査することで、多種共存や群集・生態系機能の安定維持に関わるメカニズムの解明を目指しています。

 また、人工林を含む森林の維持管理と森林資源の有効な利用方法、さらには今後数十年を見据えた森づくりに関わる問題も重要なテーマの一つです。里山や人工林における各種の森林施業や管理と路網などの基盤整備を、いかに経済的、環境的、社会的に持続的な形態で行うかについての研究も行っています。

博士論文

2010年 Factors and mechanisms that change soil organic carbon stocks and dynamics after afforestation in a Japanese coniferous plantation
日本の針葉樹人工林における人工林設定後の土壌有機炭素量及び動態に変化を及ぼす要因・機構
新井 宏受
2009年 Reproductive ecology of the congeneric dioecious trees, Rhus javanica and R. trichocarpa
雌雄異株性の同属樹木(ヌルデ、ヤマウルシ)における繁殖生態学的研究
松山 周平
2009年 Seasonal variation in nitrate uptake and assimilation properties of evergreen and deciduous plant species in temperate forest ecosystems including winter
温帯林における常緑ならびに落葉植物の硝酸態窒素利用の冬季も含めた季節性
上田 実希
2009年 マツ枯れ低質林におけるアカマツ更新の初期段階の管理方法 -古都・京都のアカマツ林景観の回復について- 呉 初平
2008年 Process and Mechanism of Change in Nitrogen Cycling during a Forest Development after Clear-cut in Japanese Cedar Plantations
スギ人工林の皆伐および植栽後の成立にともなう窒素循環の変化とそのメカニズム
福島 慶太郎
2004年 Teak (Tectona grandis Linn.f.) and food crop production under agroforestry management in moist deciduous forests of Eastern Java in Indonesia
インドネシア、東ジャワにおける湿潤落葉樹林でのアグロフォレストリーチーク林のチーク材と畑作物生産
Ris HADI PURWANTO
2002年 Maintenance mechanisms of the community structure of tree species along a sloping topography in a cool-temperate conifer-hardwood forest in the snowy region of Japan 平山 貴美子
2000年 Regeneration processes and coexistence mechanisms of Abies firma and Tsuga sieboldii in a mixed forest, central Japan
日本中部のモミ・ツガ混交林におけるモミ・ツガの更新過程と共存機構
Gregorio Angeles-Perez

修士論文

2024年 ドローンを用いたSfM解析による広葉樹形状の評価 坪田 和也
2024年 固相分光光度法による全国渓流水のリン酸濃度に関する研究 Kong Qixian
2023年 Evaluating the Potencial of UAV Structure-from-Motion for Generating Forest Degital Twin to Derive Forest Inventory Data Azwar Azmillah Sujaswara
2023年 森林内でのGNSS利用におけるマルチパスの発生状況および、フィルタリングによる測位精度の変化 兼元 大誠
2019年 ドローンとディープラーニングを用いた樹種の識別 大西 信徳
2016年 食文化と森の関係性の理解は森林保全意識の向上につながるか 三吉 章雄
2016年 データ同化が明らかにする、日本広域における展葉・落葉フェノロジーと気温の詳細な関係 池田 成貴
2016年 森林生態系からの窒素流出要因の検討ー安定同位体比など広域渓流水データを用いてー 松浦 真奈
2015年 大径材搬出における素材生産作業システムの選択 渡邊 優美
2015年 林相が水棲底生動物群集に及ぼす影響:水棲底生動物群集の種多様度指数からみた渓畔林に関する考察 田宮 優大
2015年 ヒノキ林土壌における真菌、細菌バイオマスと窒素動態の季節的変動の関係 横部 智浩
2014年 窒素負荷量が異なる森林間における土性と窒素・炭素保持との関係 落合 夏人
2014年 シカによる強度採食圧下において不嗜好性シダが植生回復に与える影響について 市村 晃
2013年 流域土地利用が腐食物質ー鉄錯体の結合特性に与える影響 日高 渉
2013年 富山県において窒素飽和・非飽和状態下にある落葉広葉樹林間の窒素動態の比較 牧野 奏佳香
2012年 素材生産作業システムの選択モデルの構築 八木 弥生
2012年 由良川流域における森林と農地からの栄養塩負荷の時空間的影響 池山 祐司
2011年 シカによる過採食が集水域における下層植生の現在量および窒素吸収に与える影響 岩井 有加
2011年 シカによる下層植生の過採食が降雨出水時の渓流水質に与える影響 橋本 智之
2010年 ササの開花・枯死が森林生態系の窒素動態に及ぼす影響 阿方 智子
2010年 作業道における運搬車の走行負荷の評価 福井 遼
2010年 ヒノキ林土壌における無機態窒素の形態変化-総速度の季節変動とその制御要因- 米田 聡美
2009年 京都・東山のシイ林における伐採後の初期更新 中村 真介
2009年 滋賀県におけるハタネズミの生息地特性解析 松浦 宜弘
2008年 履歴の異なる焼畑休閑林でのタケ類メロカンナ・バクシフェラの一斉開花後更新初期過程 池田 邦彦
2008年 ブナを利用するキクイムシ類の群集生態学的研究 飯塚 弘明
2008年 一斉開花年の異なるチュウゴクザサ個体群の集団構造 齊藤 誠子

卒業論文

2016年 UAVによる空撮画像を用いた秋季フェノロジーの観測 大西 信徳
2015年 植生、土壌タイプ、窒素負荷程度が異なる森林土壌の窒素・リン動態 柏木孝太
2015年 森林施業プランナーがフォレスターに期待する業務とプランナーの属性の関係 齋藤英梨子
2014年 総炭素蓄積量を最大化する森林施業についてのシミュレーションを用いた考察 池田 成貴
2014年 渓流水中硝酸濃度とその安定同位体比からみた近畿地方における窒素飽和の現状 松浦 真奈
2013年 ズギ人工林における間伐区集水域と未間伐区集水域の水棲底生動物群集の差異 田宮 優大
2013年 天然林ヒノキ林における間伐と下層除去が回復植生と更新に及ぼす影響 神保 大樹
2012年 窒素負荷量が異なる森林間における土性と窒素・炭素保持の関係 落合 夏人
2011年 アラカシの硝酸還元に伴う根呼吸の定量 日高 渉
2011年 暖温帯二次林におけるコナラの個体レベルの窒素動態 牧野 奏佳香
2011年 東日本大震災・被災地における森林資源の実態と資源利用の可能性
~宮城県気仙沼市唐桑町舞根をモデルとして~
森田 玲
2010年 マルチシートの敷設による下刈作業代替の可能性 池山 祐司
2011年 林業・木材利用に関する消費者・林業関係者への意識調査 小森 由衣
2009年 路網開設コストを考慮した素材生産作業システムの選択 市川 隆史
2009年 スギ・ヒノキコンテナ苗の形態的特徴と植栽後の成長 岩井 有加
2008年 土地利用と地質が有田川水系の水質に与える影響 白濱 圭通